ハーブ・精油・薬用植物のためになるお話しNo.7「聖母マリアのハーブ マリーゴールド」


 MARIGOLD [ Calendula officinalis ]

「日没と共に眠りにつき、朝日と共に泣きぬれて 起き上がるのは、マリーゴールドの花。」
― 1610〜1611年『冬物語』シェイクスピア ―


 マリーゴールドは、古代インドやアラブの文化と関係の深い花です。
 ギリシャ神話には、マリーゴールドの誕生にまつわる伝説があります。カルタという名の乙女が太陽神に恋をして、毎日その神の姿を見ることが生きがいになっていました。太陽が昇るのを待ちこがれる日々を過ごすうち、カルタはみずからの情熱の炎に蝕(むしば)まれ、恋わずらいに陥って、やせ細り、ついにはひとつの魂となって消えうせてしまいました。
 その一途な愛の証しは、カルタが夜ごと眠らずに太陽神を待っていた場所に一輪のマリーゴールドの花が咲いていたと言われます。

 マリーゴールドは、また聖母マリアが愛し、胸もとにつけていた花でもあります。
 そこから、「マリーゴールド」という名で呼ばれるようになりました。

 紋章学では、マリーゴールドは深い愛情と敬虔さの象徴とされています。
 16 世紀のフランス国王アンリW世の王妃、マリーゴールド・ド・ヴァロワもこの花を好み、太陽に向かって花ひらくマリーゴールドのエンブレムを自分の紋章に選びました。
 
 マリーゴールドは、1 月15日の誕生花です。
 花言葉は、嫉妬と悲嘆なのですが、どうやら14世紀の詩人チョーサーが、マリーゴールドで作った花輪に嫉妬というイメージを結びつけてしまったせいのようです。
 本来は、太陽のように「陽気な性格」です。
 ニコラス・カルペパーは、マリーゴールドは獅子座のハーブと記しています。



冠婚葬祭のハーブ

 古代ギリシャ人は、婚礼の祝いの席をマリーゴールドの花で飾っていました。
この花は、家に幸運を運んでくると考えられていました。また、明るい黄色の花には守護の力があると信じられていました。
 マリーゴールドの夢を見ると、成功する、あるいは幸福な結婚ができるといわれています。
チューダー朝の時代(1485〜1603年)のイギリス宮廷貴婦人たちのあいだでは、マリーゴールドの花輪を身につけたり、パンジー(三色すみれ)と組み合わせたブーケが大流行しました。
 へンリー[世の王妃だったアン・ブーリンもこの花のお酒落を楽しみました。

 マリーゴールドの花は、ほれ薬や恋のおまじないなどに使われてきました。例えば、若者たちのあいだで、
 「愛してる、愛してない」
 と、唱えながら花びらをちぎる恋占いでよく使われました。

 シェイクスピアは、弔いの花として描いています。
 マリーゴールドとポピーの取り合わせは、
 「あなたの嘆きを癒す」
 というメッセージを伝えています。
 
 メキシコの先住民は、マリーゴールドを死者の花としてきました。それは、スペイン人が黄金を求めて上陸した時代に殺された、祖先の血から芽ぶいた花だと信じていたからです。




香りと色彩ハーブ

 マリーゴールドは、昔から、食卓で風味と色づけに使われてきました。
摘みたての花びらと若い葉は、よいサラダの材料になります。また、16世紀のヨーロッパでは、スープやシチューに新鮮な花びら、乾燥させた花を浮かべることが流行しました。

 マリーゴールドの花びらには、カレンデュリンという色素が含まれています。サフランの代用品としてライスに色づけするのに使用されます。これは、かすかにコショウのような芳香がします。
 また、チーズやバターの色合いの引き立て用としても使われています。緑色の葉は野菜として、ほうれん草といっしょに食べることもあります。
 マリーゴールドの花は、飲料にもなります。とくにミルク酒には欠かせません。
 ワインもつくられています。
 新鮮な花は冬に備えて、乾燥させたり、漬け込んでおいたり、砂糖で煮つめたりしています。
  カレンデュラオイルもひとつの方法です。



癒しのハーブ

 昔から、人びとはマリーゴールドが悪しき思考を追いはらってくれると信じていました。
12 世紀のメイサーは薬草の効用として、ハーブを眺めるだけで視力がよくなる、頭がすっきりする、元気をとり戻すというようなことをあげています。
 マリーゴールドは、13世紀の医学書にも触れられています。当時、猛威をふるっていたペストに対し用いていたようです。
 近代になると、マリーゴールドは、歯痛や静脈瘤の治療に使われるようになりました。
 また火傷の痛みをやわらげたり、刺し傷の薬、消化薬としても利用されます。天然痘やはしかの処方まであります。
 ジャマイカでは、月経不順にマリーゴールドの煎じ薬が一般的に使われています。ほかの婦人病にも用いていました。
 南北戦争中は、マリーゴールドの葉と花の液は、開いた傷口と深い切り傷の治療に役立ちました。
 第2次世界大戦では、花も葉も発汗を促し、気管支を癒す医薬品のひとつにされました。
 中東の砂漠で暮らす部族の民は、種馬や雌馬たちに対する万能薬として、マリーゴールドの花の部分を持ち歩いていました。マリーゴールドが、仔馬を丈夫にし、また、脚を速くすると彼らは考えていたようです。



【参考文献】
『ハーブの魔術』 著者:マーガレット・ピクトン/
訳者:佐藤美保、田中瑞恵、森川由実子、山口香
(発行:株式会社作品社)




聖なる読書と伝説「薔薇窓」 http://baramado.info/ 著者:Joanne del apocalypse



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