「アンゼリカ」のお話 ANGELICA ; Angelica archangelica
「伝染性ペストは、空気が温床となるが、これさえ口に入れておけば感染することはない 名も優れ、性質もすばらしい 天から遣わされた聖なる斥候アンゼリカは、大天使と言う名の幸せな毒への対抗手段」
― ギョーム・デュ・バルタス16c詩人 ―
アンゼリカは、その命名から9月29日「大天使聖ミカエルの祝日の花」とされています。ある修道士の夢の中に大天使聖ミカエルがあらわれ、このハーブが疫病に効くことをどのように啓示したのかを物語る不思議な伝説が、今も伝わっています。
17世紀イングランドの博物学者ジョン・トラデスカントが、アンゼリカの標本をロシアのアルハンゲリスク(大天使)町という名の近くで発見されて持ち帰ってきたと言うのもハーブと大天使の深い関係が推し測れます。
天使とは、“人間へ神からの言葉を伝える”御使い(伝令者)であり、ギリシャ語で“メッセンジャー”をあらわす言葉 “アンジェロス”が語源とされます。
アンゼリカは、すべての部分を― 明るい緑色の葉、花の房、茎、根、種子、等等 ―いろいろな病気に処方されてきました。
アンゼリカは、アンチエイジング「長寿と若返りの秘薬」の重要な成分とされています。また、アルコール依存症、禁煙、狂犬に噛まれた傷の治療にも処方されました。
親は、“荒れ狂う若者の欲望を落ちつかせる(鎮静効果)”方法としてよく子どもたちにアンゼリカの根の乾燥粉末をワインにまぜて飲ませたそうです。
アンゼリカは、7月11 日の誕生花。古代の花言葉は、“霊感”と“優しい憂鬱(ゆううつ)”です。
アンゼリカには、昔から奇蹟の力があると信じられており、魔法から人の身を守ってくれる反面、自信のない魔女が魔法薬の調合に使うハーブでもあると言われます。また、浄化能力があり、古くから多くの宗教儀式に取り入れられました。人びとは、アンゼリカを市場へ売りに持って行く時、伝承の聖歌を詠唱しました。ある地方では、聖歌をうたいながら行列をつくり町や村をねり歩きながら運んだとされます。やがて、アンゼリカは、キリスト教の聖霊の本質をあらわすものとされたり、医者はペストを避ける方法として人々にアンゼリカを噛むようすすめ、また、乾燥した根や種子を料理用の鍋に入れて炭火で燻(いぶ)し、家を薫香で満たし浄化しました。精油(エッセンシャルオイル)の特徴ともみられる殺菌作用、浄化作用がありますから乾燥させた根や種を燃やせば、かび臭い部屋の空気のよどみを清浄によみがえらせることができます。
◆魔女の呪文から身を守るために、アンゼリカの小枝を十字架にして持ち歩く。
「北方のアイスランド島では、アンゼリカは丈がとても高く伸びます。味もよいのでお腹さえすいていれば住民はもちろん旅人たちも喜んで食べると伝えています。」
― ジョン・ジェラール『植物誌―植物総史』 1597年 ―
古くからアンゼリカは、4月〜5月に収穫されると、茎,葉,根は砂糖で煮つめられ、砂糖漬けに利用され、後にケーキのデコレーションに使われたこともあります。また、酸味の強い果物を煮るときに、アンゼリカの「幹」を入れておくと砂糖の節約になり、果物の酸味をやわらげます。
修道士たちは、アンゼリカの種子をリキュールの香りづけに使用し、パリのカルメル会修道女たちによってつくられていた有名な化粧水「オー・ド・カルメル」の重要な成分もこのハーブでした。
匂いの強いガーリックなどの食後にアンゼリカ水を身体にふりかけると、ガーリックなどの刺激臭が緩和されます。
◆アンゼリカを花冠にして頭や腕などへ身につけるとその芳香によって霊感をもたらすと言われています。
注意:糖尿病の人は、血糖値が上がってしまうので、アンゼリカを飲んだり食べたりしないでください。
【参考文献】 『ハーブの魔術』 著者:マーガレット・ピクトン/訳者:佐藤美保、田中瑞恵、森川由実子、山口香 (発行:株式会社作品社)
聖なる読書と伝説「薔薇窓」 http://baramado.info/ 著者:Joanne del apocalypse |